忙しない日々の中で、ふと深呼吸をしたくなる瞬間があります。
そんなときに思い立ったのが、東京からふらりと訪れられる、群馬の名湯・伊香保温泉。
古き良き温泉街の面影を残しながらも、どこか新しさも感じさせる、不思議な魅力にあふれた場所です。
今回は妻と二人でのんびり特急に乗って行ってきました。
◆ 旅の始まりは、赤羽駅から

朝の光が差し込む赤羽駅のホーム。どこか旅人の心をくすぐるこの駅から、私は特急「草津・四万」に乗り込みました。
車窓から見える街の風景が少しずつ田園風景へと変わっていくたびに、心も少しずつ解けていくような感覚がありました。

E257系の車内は静かで快適。時折通る風と陽の光が心地よく、まるで日常をひととき忘れさせてくれるような優しい揺れでした。
◆ 渋川駅から、時の流れが変わる
電車を降り立ったのは「伊香保温泉・榛名湖口」の名を冠した渋川駅。

そこからはバスに揺られて、山あいを縫うようにして温泉街へと入っていきます。車窓から眺める緑の山々と、遠くに見える湯煙。すでに温泉の香りがどこからか漂ってきそうで、胸が高鳴ります。
◆ オレンジ色の「IKAHO」が迎えてくれる街へ
バスを降りて最初に目に飛び込んできたのは、どこかポップで愛らしい「IKAHO」のモニュメント。

その奥にそびえるのは、伊香保の象徴ともいえる石段街。365段の階段が空へと続いていくかのように、ゆるやかに、そして堂々と伸びています。
石段を一歩ずつ踏みしめながら登っていくと、まるで時代を遡るかのような感覚に包まれます。左右には老舗の旅館やお土産店、射的場や饅頭屋さんが軒を連ね、どこか懐かしい昭和の風景が広がっていました。
◆ 胃袋までも癒される、伊香保の美味
伊香保の旅で外せないのが、地元ならではの味覚たち。
立ち寄ったのは、有名な水沢うどんのお店「大澤屋」。
どれを選んでもおいしそうなメニューが並びます。


その中で私が選んだ「ごま汁ざるうどんセット」は絶品でした。
艶やかでコシのある手打ちうどんに、濃厚なごまダレ。ひと口すすると、口いっぱいに香ばしさが広がり、思わず目を閉じて味わいたくなるほど。
天ぷらのサクサクとした食感や、添えられた地元こんにゃくの一品も、滋味深くて優しい味わいでした。
◆ 石段街の名物店「勝月堂」で、ふわりと甘いひとやすみ

石段街の途中にある「勝月堂」では、名物の温泉まんじゅうを手に取りました。
蒸したてのほかほかのまんじゅうからは、ほんのりとした甘さと黒糖の香りが広がり、手のひらから温かさが伝わってきます。
お店の方の柔らかな笑顔にも癒やされ、こうした小さな出会いこそ旅の宝物だと感じました。
◆ 千明仁泉亭で過ごす、静けさに満ちたひととき
宿泊したのは、歴史ある温泉宿「千明仁泉亭(ちぎらじんせんてい)」。

重厚な木造建築に、軒先から吊るされた風鈴の音。涼やかな音色が夏の空気と混ざり合い、心を優しくなでてくれます。
お風呂では、伊香保特有の茶褐色の「黄金の湯」にじっくりと浸かりました。
湯けむりの向こうに揺らめく灯り、肌にまとわりつくような優しい湯加減、そしてほのかに香る鉄分の香り──五感すべてが癒やされていく贅沢な時間でした。
この旅館では予約なしで空いていれば入れる家族風呂があり、近隣の山々の木々や青い空を眺めながらリラックスして黄金の湯に浸かることも出来ました。


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